パン屋が「ケーキ屋のモーニング」に学ぶ。忙しい朝を避けて売上を作る逆転のアイデア
こんにちは。パン屋さん手帖の福西です。
日々の店舗経営や商品開発、本当にお疲れ様です。
いつもはパン屋さんの外観や開業対策をご紹介することが多いですが、今回は少し視点を変えた【番外編】をお届けします。
今回私が足を運んだのは、パン屋さんではなく「ケーキ屋さん」です。
「なぜパン屋の研究のためにケーキ屋へ?」と思われたかもしれません。
しかし、パン屋さん経営におけるヒントは同業種だけにあるとは限りません。シェフの中には、カフェやレストラン、そしてパティスリーに足を運ぶことで、パン屋さんだけを見ていては気づかない「空間作り」や「新商品」の研究開発をされている方もいらっしゃいます。
特に、イートインスペースやカフェスペースを併設されている(または検討されている)シェフの方には、今回の内容はきっと参考になるはずです。
ケーキ屋さんが提供する「トーストのモーニング」
今回訪れたのは、大阪・北堀江にあるパティスリー『LE PINEAU(ル・ピノー)』さん。
コンクリート打ちっぱなしのモダンでスタイリッシュな外観が印象的です。ケーキや焼き菓子がメインのお店ですが、実は隣にカフェがあり「モーニング」も提供されています。
モーニングの提供時間は、朝9時から11時30分まで。
店頭の看板には、おしゃれな手書きのメニューが並んでいました。

【モーニングメニューの構成】
基本は「トースト+ドリンク」のセットで、トッピングの内容によって価格帯(A〜Cセット)が分かれています。
オプション(Extra)としてゆで卵やミニサラダを追加できるシステムです。
私は今回、ジャムトーストのセットと、アボカドスマッシュのセットを注文しました。
こんがりと焼かれた厚切りの食パンに、ツヤツヤと輝くジャムがたっぷりと塗られています。もう一方は、鮮やかなグリーンのアボカドがたっぷりと乗り、レモンスライスが添えられたお洒落な一皿。
サイドにはオプションのゆで卵を注文しました。
落ち着いた照明の店内、ゆったりとした椅子に腰掛け、コーヒーと共にいただくトーストは、素敵な休日の朝でした。




パン屋さんにおける「モーニング」の可能性と現実
さて、ここからが本題です。
これを読んでいる皆様の中には、「ウチでもモーニングをやってみたいけれど…」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、現実は甘くありません。パン屋さんの朝は、とても忙しいです。
深夜から仕込みをし、開店に向けて大量のパンを焼き上げる一番忙しい時間帯に、オーダーごとにトーストを焼き、ドリンクを淹れ、客席へ運ぶ……。少人数のスタッフで回している店舗では、物理的に不可能な場合も多いはずです。
「モーニングは魅力的だけど、オペレーション的に無理だ」
そう諦めてしまうのは、仕方のないことかもしれません。
視点をずらす提案:ランチやカフェタイムの「おすすめパンセット」
そこで提案したいのが、「モーニングの時間帯にこだわらない」という逆転の発想です。
パンの焼き上げラッシュが落ち着いた「ランチタイム」や、客足が少し落ち着く「午後のカフェタイム」に、セットメニューを提供してみるのはいかがでしょうか?
そして、その内容は必ずしも「トースト」である必要はありません。 パン屋さんには、すでに魅力的な「商品」が揃っているからです。例えば、「今月のおすすめパンセット」や「季節のパンプレート」、「食べ比べセット」などでも面白いかもしれません。
これなら、新たな仕入れをする必要もありませんし、カットして提供するだけならオペレーションの負担も最小限です。 お客様にとっても、「気になっていたパンを店内で少しずつ試せる」というのは大きな魅力ですし、気に入ればその足で売り場のパンを買って帰るという相乗効果も期待できます。
最後に:イートインがないお店でもできること
「うちはイートインがないから関係ないかな」と思われたシェフの方々、少しお待ちください。 イートインスペースがないお店でも、この「モーニングの魅力」を取り入れることは可能です。
例えば、
「お家でモーニングセット」の提案です。 食パン一斤と、おすすめのジャムやスプレッド、ドリップパックのコーヒーをセットにして、「休日の朝にいかがですか?」と販売してみる。あるいは、POP(店頭掲示物)で「このパンには、スクランブルエッグとブラックコーヒーが最高に合います」と、食べるシーンそのものを提案してみるのです。
美味しいパンがある。 それだけで、皆様のお店には無限の可能性があります。
「朝は忙しいから」「席がないから」と諦める前に、時間帯をずらしたり、売り方を変えたりと、皆様のお店のスタイルに合わせた形で、パンのある豊かな時間を提案してみてはいかがでしょうか?
今回の「番外編」が、皆様の新しいアイデアの種になれば幸いです。
